2022年2月4日に始まった北京五輪。今年3度目のオリンピック出場をしたスキージャンプの高梨沙羅選手が2月7日の新種目混合団体に出場した際、1回目のジャンプがスーツの規定違反として失格になり、波紋を呼んでいます。
まさかの失格…「2cm」のスーツ規定違反の判定
今回の五輪で初種目となる団体戦。チームのトップバッターを任された高梨沙羅選手は「チームに勢いを」と皆の想いを託され、100メートルを超える大ジャンプをみせました。
しかしその後、スーツの太もも周りが規定より2cm大きかったとして規定違反で失格となった。
失格を言い渡され泣き崩れた高梨選手。1人で立つことがままならず、スタッフに支えてもらう状態。報道陣の前を通る際に「申し訳ございません」と何度も繰り返す姿には心を締め付けられた。
高梨選手の1回目が失格の中、2回目にも果敢にチャレンジし、98メートル50をマーク。チーム順位にも貢献した。
「スーツの規定違反」で失格が5名出る異例の展開
今回のスキージャンプでは、スーツの規定違反で合わせて5人の失格者が相次ぐ異例の展開。しかもいずれもメダル獲得を争う強豪国の選手でした。
2022年北京五輪・スキージャンプ
スーツ規定違反で失格となった選手
・日本:高梨沙羅
・オーストリア:ダニエラ イラシュコ・シュトルツ
・ドイツ:カタリナ・アルトハウス
・ノルウェー:アンナ オディーネ・ストロン、シリエ・オップセット
「スーツの規定違反」で見えたもの
ギリギリを狙ったスーツの使用は戦略
そもそも、スキージャンプとは選手の技術力に加え、スーツや気象条件など様々な要素を重ねて頂点を極めるスポーツ。
各国は規定ギリギリを攻めるスーツを用意する戦略を取るため、少しの体重変化や気象条件の変化でも、規定違反となりうるのです。
今回の規定違反は厳しい寒さと乾燥が要因
スキージャンプが行われた場所は、標高1650メートルに位置しており、試合の午後8時ごろの気温はマイナス10度、湿度は38パーセント。ジャンプ台付近は厳しい寒さの上、空気は乾燥していた。
標高が高いので空気が薄く、浮力も得にくいので、スーツの大きさは飛距離に大きく影響を及ぼすそう。その為メダル競合は規定ギリギリのスーツを着用して攻める戦略を取るのです。
日本選手は、試合前の筋力トレーニングで筋肉が張った状態でスーツを着て出場するが、空気の乾燥により体内の水分が放出され、寒さで筋肉が縮んだのではないかと分析されています。
問題は「手動計測」と「抜き打ち」
今回、海外メディア含め騒がれているのは、
- 抜き打ちチェックだが全員ではない
- スーツを手動で計測している
という2つの点があったから。
まず抜き打ちチェックは公平な戦いをするためには仕方ないことであるけれど、それが全員ではなく無差別であるため、「メダル強豪国が狙われたのでは」という印象になってしまいました。
さらに、スーツチェックの際は「同性が手動で計測してチェック」というルールとのことで「手動だから人によって結果が変わってしまう」という点。
最新の技術力を使えば均一な計測が可能になのではないか。今回の「2cmで失格」という繊細な数字であるならば条件は揃えるべきだ、という意見が多発し、運営やルールに疑問が投げかけられました。
ポーランド判定員は「高梨選手は1・2cmではない」
高梨選手ら5人にスーツの規定違反で失格を言い渡したポーランド人判定員のアガ・ボンチフスカ氏は、世間の非難に対して「判断の正当性」を主張。
「五輪のような大舞台で失格を伝えなければならないのは本当に難しいが、それでも違反があればそういう判断をしないといけない」とし、高梨選手は肉眼で見ても違反は明らかで、1・2cmの問題ではないとのこと。
判定員はルールに則り判断したまでだけれど、先に述べた「スーツの手動チェック」など、曖昧な部分が今回のような事態を引き起こしたと思われます。
オリンピックという4年に1度の大舞台で、しのぎを削って戦う選手たち。試合外の不安を取り除き、真摯にスポーツに向き合える環境を整えることが早急に必要だと、今回の事態で浮き彫りになりました。
